第8章 春への道
月島くんと一緒に最寄り駅から電車を乗り継いで、目的地へと向かった。
練習場所である体育館には、既にチームの人と思しき人達がたくさん集まって練習を始めていた。
そんな大人たちの中に、私は一人知っている顔を見つける。
「お兄さん!!」
「………あれ?!この間の!」
お兄さんは月島くんと私の姿を見つけると、すぐにこちらに駆け寄ってきてくれた。
「今日はどうしたの?蛍がこんな所に女の子つれてくるなんて。」
「……菜月の顔見たいって言ってたじゃん。」
「ま、まあ確かに言ったけど…本当に連れてくるとは思わなかったからさ。
まだ蛍のこと、見捨てないでいてくれてるんだ。ありがとうなー…!」
そう言って、お兄さんは私の両手を取って握りしめてくる。
「ちょっと……。菜月に触んないでよ。」
「何だよ蛍、やきもちか?大丈夫だよ、取ったりしないから。」
「別に………そんなんじゃないよ。」
そう言って、お兄さんから視線を外す月島くんは何だか照れているように見えて可愛かった。