第8章 春への道
日向くんを一発殴って満足したのか、少し落ち着いた様子の影山くんが話に入ってきた。
「何となく聞いてたけどよ……名前を付けて保存?だの上書きだの……。」
「うん?」
「初めて同士がずっと一緒に居りゃあ、過去なんて無えんだから関係ないよな。」
「あ………まあ、そうだね?」
「お前が妬くような要素、俺の過去には無えから。」
「え………」
影山くんの瞳はいつだって真剣で、まっすぐだ。
まっすぐすぎて、その言葉と共にザックリ心に刺さってしまい、すぐに返事をできないこともしばしばある。
今もまさにそれだった。
固まっていると、また田中先輩が影山くんに詰め寄り始める。
「だから安心して俺のところに来いとでも言いたいのかね?影山くんよおー!!!
お前は今、自分がどんだけむず痒いことを言ったのか分かってますかコラー!!」
「お、俺は思ったことを言っただけで…!!」
「バレーは何でも器用にこなすくせに、お前のアプローチの仕方はいちいち恥ずかしいんだよ!!!屋上からの告白と言い、少女漫画か!!」
「いいぞ田中、もっとやれー」
さっきは田中先輩に辛辣なツッコミをいれていた菅原先輩が、今度は田中先輩を煽っている。