第2章 新生活
菅原先輩の件のおかげで、今日一日なんだかぼーっとして過ごしてしまった。
あっという間に放課後になる。
生徒たちで賑わう廊下をとぼとぼと歩いていると、見覚えのある先生に声をかけられた。
「あ…君!」
確か現代文の先生だったろうか。優しそうな雰囲気の先生だ。
「水沢さんだったかな?」
「はい、そうです。でも何で私の名前を?」
「バレー部のマネージャーさんなんだよね?僕、今年から新しく顧問になりました。よろしくね。」
武田先生は私に優しく笑いかけてくる。
もう覚えてくれたなんてなんだか嬉しいな。
「よろしくお願いします!先生はバレー経験あるんですか?」
「いや、それが全くのど素人で…。皆に申し訳ないから今頑張って勉強してるところなんだ。水沢さんのほうがよっぽど詳しいと思うよ。」
「そうなんですか。じゃあ、技術的な指導って誰が…」
私が練習に参加したこの2週間ほどは特にそういった人は来ず、自分達だけで練習をしていた。
武田先生も全く顔を見せなかった。
「今、どうしてもお願いしたい人がいて必死に頼み込んでいるところなんだ。あと練習試合を組んだり色々してて全然顔出せてなくて。ごめんね。」
「あ、いえ…」
武田先生が本当に申し訳ないというように謝るので何だか恐縮してしまう。
「近いうちに必ず練習にも顔を出せるようにします。みんなにもよろしくね。」
「はい!」
そう言って武田先生は職員室のある階へ繋がる階段を先に降りていった。