第8章 春への道
更衣室で手早く着替えを済ませて影山くんの元へと戻った。
そのあまりの早さに影山くんは驚いたようだ。
「随分早えな……」
「だって!」
なんだか、逸る気持ちが抑えられなくて。
影山くんの前で、そわそわしていたらそれに気付いたのか私にボールを放ってきた。
「………じゃあ、始める。」
そう言う影山くんは、少しだけ私に微笑みかけてくれていて。
そのことが私の気持ちをさらに高ぶらせる。
恋愛の意味での「好き」は未だに私の中でぼやけて掴めないままだけど、私は影山くんとのこういう時間がやっぱり好きだなあ。
そんな風に思いながら、皆が集まるまでの間、いつものように彼の練習に付き合ったのだった。