第8章 春への道
頭上から降ってくる声に、体中の力が抜けていきそうだった。
口は悪いけど、別に怒って言っているわけじゃない。
むしろ、私に気を遣わせないようにいつも通りにしてくれてるんだ。
きっとそうだ。
ああ、いつもの影山くんだ………
頭から影山くんの手が離れたところで顔を上げると、彼はさっさと私に背を向けて体育館内に入っていってしまうところだった。
「あ、待って…!」
何となく、いつもの習慣で彼の後ろ姿を追いかけようとしてしまう。
そんな私を振り返って影山くんは言った。
「お前まだ着替えてねえだろ。早く準備して来いよ。戻ってきたら嫌ってほどこき使ってやるから。」
「………うん!!」
影山くんに背を向けて、私は更衣室へと走る。
こき使ってやる、なんて言われて嬉しいんだから、いつか月島くんに言われたように私ってドMなのかもしれない。
でも、影山くんと気まずくなってから元に戻ることができると私、毎回本当に嬉しくなるんだよ。