第8章 春への道
そうこうしているうちに影山くんが佇んでいる私の姿に気付く。
気まずそうな視線を送ってくるものの、特に何も声はかけてこない。
まずは、そんな彼との物理的な距離を縮めるため、私は影山くんの近くまで歩を進めることにした。
「……………あ、あの。」
「…………。」
声をかけてみたけれど、それでも影山くんは何も言わない。
どうして良いか私も分からなくなってしまったので、昨日の告白を受けてどう思ったのか、それを正直に話すことにした。
「昨日は、ありがとう。びっくりしたけど嬉しかったよ。影山くんの気持ち、すごく伝わった。」
「………ああ。」
ようやく影山くんが声を発してくれた。
そのことに安心し、私は嬉しくなる。
「待たせてばっかりで本当にごめん。でも、もう少しだけ時間をちょうだい?私、絶対に答えを出すから。」
私の顔をじっと見つめていた影山くんはしばらく何も言わなかった。
まずいことを言ってしまったかな。
そう思って取り繕うべきか考えていたら、いきなり頭を思い切り押さえつけられて、私の視線は一気に足元へと向く。
「………さっさとしろよ、このボケ!」