第8章 春への道
先輩と並んで歩き、もうすぐ体育館に着く。
そう思った時。
私の視界に、体育館の前にいる影山くんの姿が入ってきた。
シューズを履き替えようとしているところだった。
彼はまだこちらには気付いていない。
さっき先輩と普通に接すると約束したものの、実際本人を目の前にしてしまうとやはり尻込みするところがある。
「…………」
「菜月!」
隣の先輩が、私の背中を軽く叩いてくる。
「さっきの俺との約束、覚えてるよな?」
「は、はい……。」
「なら良し!俺、先に部室行ってるから。」
私が何も言えないでいる間に先輩は、さっさと部室へと入っていってしまった。