第8章 春への道
「な、約束してくれる?」
「……?」
「俺にも影山にも、今まで通り普通に接してくれるって。」
先輩は影山くんのことを相当意識しているはずなのに。
それでも、影山くんの名前も出して私にお願いするんだ………
代表決定戦もあるし、チームのことを気にして言っているだけなのかもしれないけど、それでも私はこういう時だからこそ先輩の人となりみたいなものを感じてしまう。
菅原先輩、大人だなあ……
「はい。」
そう言って、頷いた。
それを見た先輩は、ほっとしたように息を吐いて、また口を開く。
「じゃあさ、まずいつもみたいに笑って?」
「え……」
何もないのに笑えって言われてもな。
そう思っていると、それを察したのか先輩は自ら先に笑顔を作ってくれた。
「ほら、こんな風に!」
「あ………」
目の前の先輩の笑顔に、心に春風が吹き抜けたような感覚がした。
今の季節は真逆なのに、ふんわり柔らかく温かい。
この人の笑顔は、いつも私を幸せにする。
気付けば私の頬は緩んでいて、口からは笑い声まで飛び出していた。
一度笑ってしまうと、不思議なくらい心が軽くなっていった。
それを見た先輩は、さっきよりも良い笑顔を私に向けてくれる。
「よしっ!じゃあ元通りになったところで、部活行くべ!」
「はい!!」
そう促され、先輩と一緒に体育館への道を辿った。