第8章 春への道
「菅原先輩……?!」
「良かった……もう、ゆうべは気が気じゃなかったから。明日今度こそ菜月にフラレるんじゃないかと思ったら眠れなくて。」
「そ、そんな……」
「あ、今大げさとか思った?本気なんだから仕方ないだろー!」
「いや、思ってないですよ…!」
私が即座に否定すると先輩は、ゆっくり立ち上がって私から視線を外して軽くため息をつく。
「本気ってさ。嬉しくて楽しくて幸せだけど、同じくらい辛くて悲しい時も結構あるんだよな。」
先輩は辛そうな表情のまま、先を続ける。
「昨日、影山が屋上に立ったの見た時もほんとに焦ったよ。
あいつ、柄じゃないのに勢いでああいう事できちゃうところがほんと怖い。
菜月が流されてOKしちゃったら、とか考えたらいても立ってもいられなかった。」
「菅原先輩……」
「想像したくもないのに、影山が菜月にキスしようとしてるのが勝手に頭に浮かんできたりして……。それで必死でお前ら探してたら、案の定そういう展開だった。」
ほんとに、間に合ってよかった。
そう呟く先輩の手が、壊れ物を扱うかのように私の髪に触れる。