第8章 春への道
先輩の言葉に軽く頷いてから、後をついていく。
適当な、人気のない場所まで着いたところで先輩はこちらを振り返った。
「昨日はごめんな。嫌な思いさせちゃったな。」
想像していた通りの話の切り出し方に、私は恐縮する。
先輩ならそう言うだろうと思っていた。
「いえ、別に誰も悪くないですから。私が……」
「あーっ!ストップ!」
菅原先輩は何故か私の言葉を大声で遮った。
そして私に頭を下げてくる。
「菜月は悪くないよ。だからさ、頼むから昨日のことをきっかけにしてフるのだけはやめてほしい!」
「え……」
「昨日、大地に連れられてく前、俺達のことまとめてフろうとしてただろ。」
やはり、菅原先輩にも気付かれていた。
思わず言葉に詰まる。
「俺さ、影山とはたまたま同じポジションだし、たまたま同じ子を好きになっちゃったってだけで別に好んでもめたいなんて思ってないから。」
「……………。」
「絶対にプレーに影響及ぼしたりしないって約束する。それは影山だって同じだと思う。だから……頼むよ。」
必死に頼み込んでくる先輩に、「はい」以外の返事なんて返せるはずもなかった。
軽く頷いてみせると、先輩は全身の力が抜けたようにしゃがみこんでしまった。