第8章 春への道
「お待たせしましたー」
私の思考に、店員さんの声とスープの良い香りが割り込んでくる。
目の前に置かれた器の中身を見て思わず心が踊った。
「おいしそう……!」
「ほら、食おう。」
「はい!いただきまーす!!」
麺をすする音が二人の間で響き始めると、何だか難しいことを考えていたのがおかしくなってきて、私はつい笑ってしまった。
それを見た大地さんが、不思議そうに聞いてくる。
「どうした?」
「いえ、やっぱりご飯食べると元気が出ますね。」
「そっか、良かった。少し落ちついたみたいだな。…………俺はさ、お前が笑ってくれるだけで元気出るよ。」
「えっ…… 」
「だからさ。何か難しく考えちゃいそうなときは話ならいくらでも聞くから俺を頼りなさい。良いことはあんま言えないかもしれないけど。」
「…あ、ありがとうございます…!」
私がこの人を支えたいと思うなんて10年早いのかもしれない。
抜群の安定感を持つ彼を前に、私はそんな風に思うのだった。