第8章 春への道
過去に、何かあったのかな。
そう思わせる雰囲気があった。
でも、今それを聞くのは少し踏み込み過ぎな気がして、私は自分の中に生まれた疑問に蓋をする。
「まあ、あいつらとそんなに気まずくなったことなんてまだないだろうから、これもあんまり参考にならないか。」
「い、いえ!そんなこと…!大地さんの考えが聞けるだけでありがたいです。」
……でも。
なんで、あいつらって、他人事みたいに言うんだろう。
もう私のことなんて何とも思ってないってことかな。
それとも………
気が付くと目の前の大地さんは、私に穏やかな眼差しを向けていた。
その視線を受けて、私はいつかの友人の言葉を思い出す。
“あんな優しい目、好きな子にしか向けられないよ”
大地さんのことを好きだった彼女はそう言った。
自惚れかもしれないけど、今向けられている視線は、まさにそういった類の物のような気がする。
だとしたら、やっぱり。
彼は自分の気持ちを、チームや皆のために抑えようとしているのかもしれない。
もしかしたら、私をこれ以上混乱させないようにとか、そういう意図もあるのかもしれない。
大地さんはいつも一段どころか二段も三段も私達より上にいて、そこから優しく見守っているような人だ。
でも。
時々、そんな彼を心配になって、支えたいとか力になりたいとか思ってしまう。
これはさっき大地さんの言っていた“支えたい人”に当たるってことなのかな………。