第8章 春への道
器、大きいなあ。
大地さんには、この人について行けば大丈夫だと思わせる安心感がある。
周囲が慌てた時も冷静に状況を見極めて、皆をまとめる。
まだ高校生にも関わらず、そんな雰囲気を醸し出せる大地さんに、私は事あるごとに尊敬の念を抱くのだった。
さっきだってそう。
あの場で、ただ一人落ち着き払っていた。
大地さんも、告白してくれたあの時から変わっていないのなら二人と気持ちは同じはずなのに。
そう考えると、“好き”という気持ちは、その定義も伝える方法も、やっぱり人によって違うものなのかもしれない。
「…………」
「何難しい顔してんの。またあいつらのこと考えてた?」
「え!!」
どうやら相当おかしな表情をしていたらしい。
簡単に考えていたことを見透かされてしまう。
「ずっと、答えが出なくて。」
「あいつらのどっちが好きかってこと?」
「いえ……それよりもっと根本的なことで。………好きってどういうことなのか。色んな人に聞いてみたりはしてるんですけどね。」
仮にも自分のことを好きだと言ってくれた相手に話す内容ではなかったかもしれない。
でも私、この人には嘘はつけない。
もともと嘘は嫌いだし、うまく隠せるような性格でもないけれど、そういうこと以上に。
本当のことを言っても受け止めてくれそうな安心感。
大地さんなら、という信頼。
そういうものが、私を彼に甘えさせる。