第8章 春への道
駅を通りすぎて少し歩いた先に、大地さんのお気に入りのお店はあった。
店内に踏み入ると、席についているのは男の人ばかりで、皆一心不乱にラーメンをすすっている。
熱気とスープの良い香りに、思わずお腹がなりそうになってしまう。
テーブル席に腰を下ろして、ようやく落ち着いた。
今日は一日本当に色んな事があったけれど、今ここでこうしていると、それらがすべて本当にあったことなのか分からなくなってくる。
お祭りってどうしてこんなにも儚いものなんだろう。
そんなことを考えて、ぼーっとしていたら大地さんに声をかけられた。
「菜月、何にする?俺はいつもここ来ると醤油ラーメン頼むんだけど…」
「私も同じのにします!大地さんのおすすめ、きっとおいしいだろうし。」
「そっか、分かった!」
そう言って大地さんは店員さんを呼んで注文を済ませてくれた。
そしてその後で私と視線を合わせてから言う。
「とりあえず食って落ち着こう。お前、腹空いてると異常に元気なくなるからすぐ分かるよ。」
「ごめんなさい、何か子供っぽくて……。」
「いや、俺は良いと思うよ、そういうの。分かりづらくてめんどくさいやつよりずっと。」
「ありがとうございます…」
取り繕うとかそういうことじゃなくて、大地さんが本当にそう思って言ってくれていることが雰囲気で分かったので、私はお礼を呟く。