第8章 春への道
さっき、謝罪のあとに言おうとしていたことを、大地さんは察したようだった。
「自分のことでもめて、チームの雰囲気まで悪くなったらとか考えちゃったんだろ?だからさっき断ろうとしたんだよな?」
「…………はい。私がいつまでも答えを出さないでいるから…」
「………。」
私の答えを聞いた大地さんは腕を組んで何事かを考えているようだった。
でも組んだ腕をといて、こちらに笑顔を向けるまで、そう時間はかからなかった。
「……よし、今から飯でも行くか!」
「え?」
「俺のおごり!そこでいくらでも話聞いてやるから。」
その言葉が、じわりと体に染みて、実感する。
私は皆への対応に困った時、この人に助けられてばかりだ、と。
“俺に守らせてくれればそれで充分だから”
気持ちを告げられたときに言われた一言をふいに思い出す。
他の皆と違って自分の気持ちを主張してくることがほとんどない大地さんに主将のけじめみたいなものを感じた私は、彼の笑顔を前に一人切なくなってしまうのだった。