第8章 春への道
「あの。ごめんなさい、私…」
「菜月、ほら行くぞ。」
断りの言葉を口にしようとした私の背を、大地さんが軽く押す。
「え、あの……」
「いいから。」
そう言われて、そのまま大地さんに右手首を掴まれて帰り道へと誘導された。
残してきた二人に声が届かないくらいの距離まで来たところで、大地さんは苦笑した。
「まったくあいつらは何やってんだか……。悪いな、こんなことになって。」
「そんな…!大地さんが悪いんじゃないですし。……それに、影山くんも菅原先輩も別に悪くないです。私が……。」
私がいけないんだから。
そう続けるべきだったけど、言葉にすると涙も一緒に溢れてきてしまいそうだったので口には出せなかった。
言葉に詰まっている私に気付いた大地さんが、多分わざとなんだろう。
明るく声をかけてくれた。
「なあ菜月。ひとつ良いこと教えてやろうか。」
「え…?」
「熱くなってる時には答えは出さない!これ、鉄則!」