第2章 新生活
菅原先輩のセレクトした曲の詰まったCDは、邦楽の優しい男性ボーカルで、切ない恋を歌った曲が多かった。
洋楽は日本語のように反射的に意味が頭に入ってくることはないから、どうしてもサウンド重視になる。
一方、邦楽はサウンドに加えて歌詞が心情にマッチしていたりすると、余計に音楽の沼にどっぷりハマる気がする。
これを聴いて俺のことを思い出せ、なんて言われたら嫌でも意識してしまう。
先程の菅原先輩は、明らかにいつもと違って様子がおかしかった。
聴けば聴くほど、菅原先輩の笑顔が思い起こされて恥ずかしくなり、私はイヤホンを耳から引き抜いた。
曲はどれも素敵なものばかりで、このアーティストも気になってきたけれど、明日菅原先輩にそれをどんな顔をして伝えたらいいのか分からなかった。
「もう寝よう、寝よう。」
そう呪文のように唱えて電気を消し、ベッドに入る。
けれどやっぱり先ほどのことを悶々と考えてしまい、その日は遅くまで眠れなかった。