第8章 春への道
けれど。
これは、デジャブ………?
気が付くと、私の目の前には私の顔の横の柱に手をついてこちらを見下ろす影山くんの姿があった。
「なあ。もうそろそろ逃げんのやめろよ。」
「え………」
「好きなんだよ、お前が…」
切ない視線が私を射抜く。
影山くんの空いた方の手が、私の手をぎゅっと握った。
「いい加減こっち向けよ…」
その言葉と同時にまた影山くんが私に近付く。
初めての合宿のときと同じ。
拒否する間もなく影山くんがどんどん近付いて
キス………
「影山!!!」
突然、暗闇に誰かが走ってくる足音と影山くんの名前を呼ぶ大きな声が響いた。
唇が重なる直前のことだった。
影山くんはその声に弾かれたように顔を上げ、私から離れると、こちらに走ってきた人物の名前を小さく呟く。
「菅原さん………」