第8章 春への道
「さっきの……聞こえたかよ。」
「う、うん……」
何と言ったら良いか分からなくて、私は相槌を打つだけで俯いた。
何で、急にあんな。
聞きたいことは色々あったけれど、さっきの影山くんの絶叫の内容を思い出すと途端に何も言えなくなる。
“初めて会った時からお前の事が好き”
改めての告白は、時間が経つほどに胸にズシンと響いてくる。
さっきは頭が真っ白だったけど、幾分冷静になってきたからだろう。
「菜月……何か言えよ。」
「え!ええと……。」
目の前の影山くんが一歩近付いて来る。
それに合わせて私は一歩後ろに後退する。
「顔上げろよ。こっち見ろ。」
「…………。」
無理。
あんな熱い告白されたあとで、まともに顔なんて見られない。
そう思って私はじりじりと近付いて来る影山くんから後退を続けた。
でも、そんな後退も校舎を支える大きな柱によって阻まれてしまう。
背中に柱の感触を感じて驚いた私はすぐに柱から離れようとした。