第8章 春への道
「え………」
思わず絶句する。
そこにはもう、影山くんの姿はなかった。
「え、なにこれ。言い逃げ?!新しいパターンだね!返事聞かないでどっか行っちゃったよ。」
「…………」
全身の力が抜けたような気がして、その場にへたり込む。
「え、ちょ、菜月大丈夫?!」
影山くん…
自分が返事を待ってたら私が困ると思って気を遣ってくれたのかな。
影山くんが何故この企画に参加する気になったのかは皆目見当がつかないけれど、答えを聞く前に姿を消したのは彼なりの優しさのような気がした。
「影山くん……菜月のこと、本当に好きなんだね。」
「え!!」
友人の言葉に、顔から火が出そうになる。
「なんか、今の見てすごくそう思ったよ。うらやましいなー、このー!」
からかわれて更に恥ずかしさが増し、私は熱くなった顔を俯けた。