第8章 春への道
「か、影山くん……?!!」
あんな所で何をしているんだろう。
まさか、影山くんがそんな。
「1年3組、影山飛雄!!!」
脳内が大混乱を起こしている間に、遥か高みに立つ影山くんはいつもの怒声のような大きな声を響かせ始めた。
「1年1組、男子バレー部マネージャーの水沢菜月!!1回しか言わねえからよく聞けよ!」
自分のクラスと名前を名乗ってから、今度は私の名前が夜空に響いた。
呼ばれたのは紛れもなく自分の名前なのに、何故だか他人事に感じてしまう。
「俺は…多分!初めて会った時からお前が……お前の事が好きだコラー!!!!! 」
私のことを知っている人たちが私の方を振り返るから、知らない人たちまでその視線を追ってこちらを振り返る。
複数の視線は、まるでスポットライトのようだった。
でも、また影山くんの大声が屋上から降ってきたので皆は私から視線を外し、もう一度天を仰ぎ見る。
「俺は必ず最強のセッターになってお前に俺のことを好きだって言わせてみせる。だから覚悟しとけボケェェェ!!!!」
影山くんの絶叫が終わると、校庭は今日一番の盛り上がりを見せる。
再び視線のスポットライトが私を照らした。
「ど、どうするの菜月…返事しなきゃ……」
隣の友人が焦ったように私に促してくる。
けど、頭が真っ白で何も言葉が出てこない。
でも、何か…何か言わなきゃ…!
影山くん、私………
そう思って屋上を見上げる。