第1章 出会い
「な、なんだよ…」
「ありがとう、何だか日向くんって悪気ないから無下に断れなくて。」
「別に…。」
人見知りなのかな。
あまり目を合わせてくれない。
「私、水沢菜月。私ね、さっき初めて生でジャンプサーブ見たよ。すごいね!えっと…」
「…影山。」
名前を聞きたがっていると察してくれたのか、自分から名乗ってくれた。
「すごくなんかねえよ、まだまだ練習たりねえんだ。」
「そっかあー。でも私、さっきの影山くんのサーブの迫力絶対忘れないよ。」
「……そうかよ。」
それだけ言い残して、影山くんは倉庫の方へと走って行ってしまった。
去り際に見えた耳が赤くなっていた気がするのは、気のせいだろうか。
お世辞でも何でもなく、私にとって忘れられない一本となった先程のサーブは、バレーの試合を生で見てみたいという欲求に繋がるには十分だった。
胸がわくわくしている。
体育館に入ってきた風に春の匂いを感じる。
始まりの予感が私の心に迫っていた。
私の一生に一度の高校生活、最初の春が始まるーー