第8章 春への道
お客さんに、と言うよりはバレー部の皆にメッセージを届けるつもりで全力で歌い、私の短い出演時間は幕を閉じた。
曲が終わって深々と一礼をしたところで我に返り、一刻も早くステージから逃げ出したくなって小走りでステージ脇へと身を隠した。
結果なんてもうどうでも良かったし、早く部の皆のところへ行きたくて。
出番を終えて羽が生えたかのように軽くなった気持ちと足取りで皆のところへと急いだ。
「菜月ー!!!」
走ってくる私に気付いた西谷先輩が両手を掲げている。
「「いえーい!!!」」
二人で声を合わせてハイタッチを交わした。
「すっげー良かったぞ!!他のやつの歌なんて知らねえ!もうお前が優勝だ!」
「こらこら西谷、今まさに2番目の子が歌おうとしてるんだからそういうこと言うなっての。」
西谷先輩の言葉に大地さんが即座にツッコミを入れる。
その後、私の方に視線を向けた大地さんはそのまま言葉を続けた。
「でも、俺もマジで感動した。自惚れんなって言われるかもしれないけど、何か俺たちに向けて歌ってくれてるような気がしたし……」
それを聞いて私は嬉しくなる。
届いたんだ、私の気持ち。