第8章 春への道
菅原先輩と一緒に選んだ曲が流れ始める。
この曲は、私の大好きな曲。
皆も絶対一度は聴いたことがあるはずの有名な曲だ。
大人になんてなりたくない。
今のまま、大好きな皆と一緒にいたい。
でも、時間は待ってはくれないから。
限られた時間を大切に、大切に駆け抜ける。
皆に出会えたから、私は私に生まれたことを幸せに感じるよ。
キーが声に合っていて歌いやすいのはもちろんだったけど、何より歌詞の内容が私の今の心情にとてもよくマッチしていた。
まだ高校に入学して半年で、大人になった時のことなんて想像がつかない。
代表決定戦や、春高。
そういった目先のことしか考えられない。
でもその先に待つのは確実に先輩たちとの別れだ。
今のままで居たい。
ずっとこのメンバーで、皆がボールを真剣に追いかけるのを見ていたい。
応援し続けたい。
そういう気持ちを乗せて歌った。
きっと、大人が青春と呼ぶものは、こういう限られた時間を濃密に過ごすことなのだろう。
いつか振り返った時、私の青春はここにあったと自信を持って言えるんだろうな。
私は皆に出会えて、本当に良かった。
ありがとう。