第8章 春への道
月島くんに手をふって、私は体育館のステージ裏へと急いだ。
私の歌う順番は何と一番最初だったので、他の人がどんな感じなのかを知る前に歌うことになる。
でもある意味、それが気持ちを楽にした。
前座だと思って歌おう。
直前にすごく上手い人に歌われるよりずっと良かった。
司会の人に名前を呼ばれて、ステージ脇からスポットライトの当たる中央へと歩き出す。
スタンドマイクに相対して、私は体育館に集まった人たちを見下ろした。
すると、不思議とそこだけ光があたったかのようにバレー部の皆が集まる一角を見つけた。
大勢の生徒たちの中の、一番後ろの隅っこ。
皆、私の名前を呼んで手を振ってくれている。
それを見て、思わず笑顔がこぼれた。
ステージ上で自然に笑えたことに自分で驚いてしまう。
月島くんの言う通り、楽しんで歌ってみよう。
部の皆が見てくれているなら出来そうな気がしていた。