第8章 春への道
ようやく笑いがおさまったらしい日向くんは、田中先輩の後ろに隠れて二人に野次を飛ばしている。
「やーい、二人ともフラれろー!!」
「ああ?!」
「……はあ?」
「ひい!!!」
影山くんと月島くんに同時に鋭い視線を向けられた日向くんは、田中先輩を盾にしているにも関わらず大袈裟に縮み上がった。
「……でも、確かに大勢の前で自分のものだって見せつけるには良い機会なのかもしれねえな…」
「影山くんまで何を言い出すの?!」
影山くんの発言を受けて田中先輩が再び口を開く。
「お前ら。告白イベントならちゃんとしたのがもうひとつあるぜ。屋上から校庭にいる生徒たちに絶叫して好きな奴に愛を伝えるという、その名も烏野名物“愛を叫べ!”!!」
「そのままじゃないですか…」
「まあ、完全にお前みたいなやつには向かねえな月島。声届かなそうだ。」
「というかそれの場合、失敗率高そうじゃないですか。ステージのより更にふざけ半分っていうか…」
「さすがだな。その通りだ。まあ、出るやつのキャラクターによる所も大きいけどな。見てる方からすると盛り上がるぜ。失敗しても笑えるっていうか。」
「それこそ見世物じゃないですか。あー、やだやだ……」
「しかしだ。見世物かどうかは別にして、文化祭のあとはカップルが急増しておひとり様にとってはとても住みづらい状況になるぞ。皆すり潰したくなってくる。」
「それは田中さんが過剰に反応し過ぎだからじゃないですか。」
「お前もすり潰してやろうか月島ー!!!」