第8章 春への道
好きで好きで、離れたくない。
この気持ちはどうしたら君に届くだろうか。
毎日毎日、会いたくて仕方ない。
こんな僕を、君に知ってほしい。
受け入れてほしい。
行き場のない感情を、今日も僕は歌に乗せる。
歌詞の内容を反芻して、今度こそ私は爆発する。
歌い終わったあと、部屋が明るくなってから先輩が口を開く。
「えー、正しいラブソングの使用法はこういう感じです。わかった?」
先輩の言葉に、無言でモニターの方を見たまま何度か頷きを返す。
「菜月、こっち向いて。」
「え、ええと…」
近いし、恥ずかしくて無理。
そう思って渋っていると急に先輩に手を握られた。
「………!!」
「こっち向いてくれないなら、俺の方からどんどん近付いてくからな。」
え。
そう思っている間に、握られた手にゆっくり指が絡む。
それでもまだ、先輩の方を向けない。
「あ、あの菅原先輩…」
「ん?やめないよ、俺。」
声音はいつもと変わらず。
表情もきっと穏やかなままだろう。
なのに拒否を許さないような頑なさを同時に感じた。
次にもう一方の手で肩を抱かれた。
更に先輩との距離が近付く。
「なあ、俺…」
私の顔を覗きこむようにして先輩の顔が近付いてくる。
「俺、いつもお前にこういうことしたいって思ってる。」