第8章 春への道
「わ、分かりました…。先輩がそう言うならラブソングはやめておこうかなと思います。」
何だか恥ずかしくていたたまれない気持ちになったので、私は選曲の機械を先輩に押し付けた。
「あ、あの。さすがにずっと立て続けは疲れるので…今度は先輩歌ってくれませんか。」
「え、俺?」
機械を受け取って少しだけポカンとする先輩は、何だか可愛かった。
この前のカラオケの時は何だかんだで退室していた時間が長かったし、人数も多かったのでマイクが回ってくる順番が少なく、私は結局先輩の歌を聴けず終まいだったのだ。
「先輩の歌も聴いてみたいです。」
「先に言っとくけど、うまくないからな!期待すんのやめろよ。」
「はーい。」
素直に返事をしたけれど、実際全く期待しないなんてのは無理な話だ。
先輩の普段の声はとても素敵だし、歌ってもきっと素敵に違いない。
そう思った私の考えは、やはり間違いではなかった。
タッチペン片手に少しだけ悩んだ様子を見せた先輩だったけど、そう時間のかからないうちに選曲は完了した。
以前、先輩にもらったCDに入っていた曲が流れ始める。