第2章 新生活
「…いたいた。今日のネタのやつが。」
「…あ?」
影山くんが振り向く。
周りには部の先輩たちもちらほら集まっていた。
幸い大地さんはまだいないようだ。
月島くんと影山くんが会話する事態になると、どうしても構えてしまうし、大地さんの所在を確認してしまう。
「今朝、僕見ちゃったんだよねー。」
「何をだよ。」
「影山とマネージャーが一緒の傘で仲良く登校してるところ」
「なっ……///」
影山くんの顔が一瞬で真っ赤になる。
月島くんの言葉が聞こえたらしく、田中先輩と菅原先輩も驚いていた。
影山くんの態度から、本当のことだと感じ取ったようだ。
「やるじゃん、高校入学して早々部のマネージャーに手を出すなんてさ」
「月島…てめぇ」
またもめる。
そう思った私は、月島くんと影山くんの間に割って入った。
私が説明するのが1番手っ取り早い。
「違うんだよ月島くん!今朝のあれは、私のおせっかいで影山くんは嫌がってたんだって。」
「嫌がってた?あれが嫌がってる人の表情だったのかなあ。……ねえ?自分でわかるよね、影山?」
「お前…本当にいい加減にしろよ。」
拳を固く握りしめる影山くんを見て、焦る。
「影山って本当にわかりやすいよね。」
月島くんはスタスタと影山くんのところまで歩いて行って何事かを耳打ちする。
一瞬、殴りかかるのかと思ってヒヤヒヤした。
そのあと、何事もなかったかのように先輩たちも追い抜かし、そのまま月島くんは部室の方へと歩を進めていく。
月島くんの耳打ちを聞いたあと、影山くんはそれ以上何も言わなかった。
一体何を言ったんだろう。
それは、影山くんにしか分からないけど、私はそれがとても気になるのだった。
「まだ付き合ってないんなら、僕にもチャンス、あるってことだよね。」
月島くんに言われた言葉が引っかかっているのか、影山くんはしばらく一点を見つめたまま、そこを動かなかった。