第2章 新生活
「ツッキー、何か今日はずっと楽しそうだね。」
山口くんが月島くんに話しかける。
今は、午後練に向かうところ。
途中で二人に会ったので、こうして一緒に体育館へと歩いている。
「朝さ、おもしろいもの見ちゃって。」
月島くんは何故か私の方をちらりと見てにやっと笑った。
「えー、なになにツッキー教えてよー」
「後でね。」
私に関することなのかな。
気になったけど、月島くんは今はこれ以上話してくれなさそうなので、別の話題をふる。
「ねえ、月島くんってさ。いつもヘッドホンしてるけどどんな曲聴いてるの?」
「…主に洋楽。」
彼の口からは、洋楽に疎い私にはおよそ分からないような海外アーティストのグループ名がいくつか飛び出した。
「へー!洋楽ってほとんど聴いたことないや、私。」
「邦楽も別に聴かないわけじゃないけど、洋楽のほうが耳馴染みが良くて。」
「そうなんだ!何か洋楽好きとかかっこいいね。私も聴いてみようかなあ。」
月島くんは、あのさあ、と言ってゆっくりとこちらを振り向く。
「洋楽好きだとかっこいいっていう発想が幼稚だよね。」
「う…」
月島くんは笑って言った。
でもその笑顔は、決して嫌味を言う時のそれではなかった。
「ま、まあでもさ!俺も洋楽とか聴いてるツッキーかっこいいと思うよ!」
「…はいはい。」
山口くんの言葉は軽く受け流し、さっさと歩いて行ってしまう月島くん。
体育館へと続く道の角を曲がったところで、誰かに気付いたようで一瞬立ち止まった。
そして口を開く。