第8章 春への道
そう思って1曲目を入力した。
電子音がして今入力した曲が準備されているところで先輩が戻ってくる。
「お、早速いれたな。あーこの曲知ってる。」
「あ、飲み物ありがとうございます!」
「うん。ほら、始まるぞ。」
先輩の前ではもう一度歌ってしまっているので気は楽だった。
曲が終わって一息つくと、隣の先輩が軽く拍手してくれていることに気付く。
「…あ、そんな気を遣わないで下さい。別に拍手されるようなものじゃないし。」
「そう?俺すごい好きだよ菜月の歌。ずっと聴いてたいくらい。」
「あ…ありがとうございます…」
恥ずかしいけど嬉しかったから素直にお礼を言う。
「あ、これドリンクのとこにあったから持ってきた。良かったら使って。」
そう言って先輩は私にブランケットを差し出す。
「え、えー…!な、なんか私、女の子みたいですね…!!」
「いや、普通に女の子じゃん。何言ってんの。」
そうなんですけど、なんていうか。
こんな風に大切に扱われると、自分は女の子なんだなあと感じるんです。
先輩が渡してくれたブランケットを足元に広げる。
心地よい温かさに包まれて気分が良い。
「何の曲を歌うか悩んでるんで、良かったら先輩も一緒に考えてもらえませんか。」
「おし、とことん付き合うべ!じゃんじゃん歌って!」
その言葉に甘えて、私は良さそうな曲を片っ端から歌っていくことにした。