第8章 春への道
カラオケについて個室に入ると、すぐに先輩は簡単につまめるもののオーダーやら室温の調整やら色々動いてくれた。
きちんと私の希望を聞いた上で。
その動きが鮮やかすぎて、私はついぼーっとその光景を見つめてしまう。
「ドリンク取ってくるよ。何がいい?」
「……あ、いや、そのくらい自分でやりますよ!」
そう言って席を立とうとした私だったけど、先輩に両肩を押さえられ、再び座らされた。
「いいの。そんな遅くまでいられないんだし、お前はちょっとでも練習しな?ほら、何にするんだっけ。」
「あ…じゃあ…。」
ドリンクの希望を聞いた先輩が部屋を出て行ってから私は備え付けの機械で選曲を始めた。
そう、そもそも後夜祭で何の曲を歌うかということからして問題なのだ。
好きな曲は山ほどあるけど、歌いやすい曲とは異なることも多い。
とりあえず、片っ端から試していくしかないかな…。