第8章 春への道
そして、結局彼女の押しに負けて参加する運びとなったのである。
決起会のカラオケの時とは比べ物にならないくらいの重圧に、今から押し潰されそうだ。
「……………。」
「…あのさ、どうかした?菜月…。」
部活帰り。
いつもと同じように菅原先輩と帰り道を辿っていた。
私の様子を見て菅原先輩が気付かない訳はないのだけど、案の定指摘された。
「ちょっと心配事ができちゃって…」
「そうなの?俺で良ければ聞くけど…。」
先輩がそう言ってくれたところで、もう駅に到着しそうになる。
それに、私はこれから行かなければならないところがあった。
「……あ、でももう着きますし。また時間あるときにでも。ありがとうございます、それじゃ。」
私が駅とは反対方向に歩き出すと、先輩が慌てたように声をかけてくる。
「ちょ、ちょっと待てって。こんな時間からどこ行くつもり?」
もうすぐ代表決定戦のため、最近はいつもの部活より更に帰り時間が遅くなっていた。
先輩が心配してくれているのはそのためだろう。
「あ、ええと…。その、練習に行かないといけなくて。」
「練習?何の?」
「カラオケの…。」
「カラオケ??」
「す、菅原先輩ー……」