第8章 春への道
私はこの子に対して申し訳ない気持ちというか、引け目みたいなものを未だに引きずっているところがある。
故にこんなに必死に頼み事をされると無理ですと一蹴することができない。
「あ、あのね!カラカラクイーンになると坂ノ下商店のお買い物券が貰えるよ!」
「え、そうなの!」
烏養さん、頑張ってるんだなあ…。
なんて関係ないことを一瞬考えてしまう。
「菜月、出てみたらいいじゃん!」
「日向くん…」
私達の話を聞いていたらしい日向くんが声をかけてくる。
「菜月ならきっとクイーンになれるって!応援する!」
「う、ううーん……でも大勢の前で歌うの恥ずかしいし怖いな……」
「お願い!菜月ちゃん!!」
「うう…………。」