第8章 春への道
「あーあー、ほっぺた赤くなってる…影山お前いくら何でも強く摘みすぎだろ…」
大丈夫?
そう言って近付いてきた菅原先輩が私の両頬を手で包み込む。
その優しい手の感触に、頬の痛みが一瞬にして吹き飛ぶ。
「だっ……大丈夫です……」
先輩は私の返事に笑顔で返してから影山くんの方に向き直る。
「影山、さっき自分で(仮)って言ったんだからもう少し菜月の扱い方気をつけろよな。お前だけのものじゃないんだぞ。ちょっと乱暴すぎ!」
「こいつがアホすぎるから悪いんです!」
私をびっと指さして菅原先輩に反論する影山くん。
その後で大きくため息をついてから舌打ちをした。
「だから女子力なんて上げんなっつったんだよ…」
「え?」
「早速どこの馬の骨とも知れねえやつが釣れたじゃねえか!」
「あいつ、バレー部だとか言ってたよな?」
私に一歩近付いてきた大地さんが問う。
「あ、はい。」
「どこの高校だって?名前は?」
「あ…ごめんなさい。自己紹介の時、頭真っ白で…。学校名どころか名前すら覚えてないです。」
それを聞いた田中先輩が大声で笑った。
「ぎゃははは。ざまあみろ、あいつ全く菜月に相手にされてねえ!」
「食い物目当てに行くような女っすからね。」
「あのさ、事実なんだけど影山くんに言われるといちいち心をナイフで刺されてるような気がするんだよね。」
「懲りねえようならもっとえぐってやろうか。」
「……遠慮します。」