第8章 春への道
「とにかくっ…!もう我慢の限界だ!帰んぞ!はやく来いよ!!」
「うわあ!!」
影山くんに思い切り腕を掴まれて引きずられる。
「おい影山、あんまり乱暴にするなよ。」
菅原先輩が注意してくれるけど、影山くんは無言でそのままの勢いを保ち、ぐんぐん店の出口へと進んでいく。
店の外まで引きずり出されたところでようやく腕は離された。
残してきてしまった友人たちのことが気になったけど、もうそろそろお開きのムードだったし、自分の役目は大方果たせただろう。
そう思い、ほっと一息つく。
「ほんとにお前は油断も隙もねえやつだな……どうせ食いもんに釣られて参加したんだろ?!」
「うっ………」
ご機嫌斜め、というレベルではないほどのしかめっ面の影山くんにそう指摘された。
図星なので言葉に詰まる。
「はい、ごめんなさい…友達が困ってたからってのはあるけど、最終的にはそこで落ちました…おいしかったです…」
「料理の感想なんか聞いてねえんだよ…!!」
影山くんに思い切り両頬をつままれる。
「いひゃい、いひゃいよ…!!」
「今度こんなのに参加したらどうなるか分かってんだろうな…?!」
殺される気が、します…。
私は必死で首を縦に振った。
影山くんのサーブは殺人サーブと言われたりしているけど、彼はこのひと睨みだけでも人を殺せる気がする。
私の様子を見た影山くんは、乱暴に私の頬から手を離した。