第2章 新生活
痛いところをつかれた、というように影山くんは言葉に詰まる。
そんな彼を見て、私は背伸びをして、開いていた傘に影山くんを入れる。
こういうことがあると、まじまじと彼の背の高さを実感する。
「お、おい……」
明らかに照れた様子の影山くん。
「ごめん、影山くんが風邪ひいたら私が嫌だ。傘持ってないの見ちゃったんだもん、ほっとけないよ。どうせ同じ所に行くんだし一緒に行こう。」
「そうは言ってもお前…クラスのやつとかに見られたら誤解されるぞ。」
「別にいいよそんなの。ほら、行こう?」
「………っ…」
頑なな態度の私を見て観念したのか、影山くんは私が持っていた傘の柄を掴んだ。
その時、少しだけ指が触れた。
「わかったよ……行くぞ。」
屋根の下から外へ出れば、私と影山くんを守る傘に雨の音が響く。
学校へ着くまでの間、あまり会話はなかったけれど気まずくはなかった。
雨の音がとても気持ちよく耳に届く朝だった。