第8章 春への道
体育館に踏み入ると、私に気付いた菅原先輩が笑顔を向けてくれた。
でもすぐあと、その表情は驚いたような種類のものに変わる。
「菜月、どうした?今日はおしゃれしてるんだな。」
可愛い。
そう言ってアレンジしてもらった髪を軽く撫でられた。
「え、ええと…これは友達が。女子力を上げなさいって。」
皆には合コンのことは黙っておいたほうがいいだろう。
もう少ししたら代表決定戦もあるのに私だけそんな浮かれた集まりに参加していることがバレたら後ろめたい。
そう思った私は、その部分だけ意図的に隠して残りは本当のことを話す。
「へえ。そのままの飾らない菜月も好きだけど、おしゃれしてる菜月もやっぱ可愛いな!なんかドキッとした。」
「菅原先輩…」
「女子力上げるのは結構だけどさ。それ発揮する方向間違えないでよね。」
菅原先輩の直球を食らって動揺しているところに、今度は月島くんに声をかけられた。
「なんか隠してるでしょ。」
「え?!」
「だからさ、そんな張り切ってるの明らかにおかしいじゃん。白状しなよ。」
「別に…友達が張り切っただけで私が自分でやったわけじゃないし…」
「ふーん…」
月島くんの疑いの眼差しが痛い。