第8章 春への道
「バトン、ちゃんと受け取れたな。」
「あ、うん。何か、無我夢中で。良かったよちゃんと出来て…!」
「…お前って結構やる時はやるタイプだよな。」
「そ、そう?」
影山くんの言葉に照れていると、その次の言葉でまた落とされた。
「まあ、詰めは甘いけどな。最後のあれ何だよ。バトン渡し終えたからって気ぃ抜きやがって。」
「あはは…ごめんなさい…。」
少ししょげていると、影山くんは更に言葉を続けた。
「ケガ、平気なのかよ。」
「あ…うん、大丈夫だよ。ちょっと擦っただけだから。」
「そうか。……結果として1位だったわけだし、今回はよくやったな。」
私から視線を外して影山くんはそう呟いた。
その様子が、何だかおかしくて。褒め方もフォローの仕方も影山くんらしい。
「影山くんもかっこ良かったよ。」
口から滑り出た本音は、目の前の影山くんを一瞬固まらせた。
でもすぐにそのフリーズを解いた影山くんは、不敵な笑みを浮かべて口を開く。