第8章 春への道
「なっ……!お前、何やってんだよ!バトン持ってかなきゃ意味ねえだろうが!!」
「だってー!!!」
そんな私達の様子を見ていた月島くんが笑う。
「逃げられてやんの、王様。」
「ああ?!何だと!?」
「お前が怖い顔で走ってくるからいけないんだろー!もっとさ、菅原さんみたいに爽やかに走ってこいよ!」
「うるせえんだよ日向ボケェ!やれるもんならとっくにやってる!!」
日向くんのせっかくのアドバイスにも、影山くんは耳を貸す気配はない。
そんなことをしているうちに、次のプログラムはとうとう部活対抗リレーになってしまった。
緊張から、足が言うことを聞かなくなる。
ど、どどどどどうしよう…
頭が真っ白になりながら、集合の列に加わろうと無理矢理足を動かしたところで頭に掌の重さを感じた。
「わっ……」
「なるべく怯えさせねえように努力するから…。繋げよ、西谷さんに。」
「う、うん……」
それだけ言うと影山くんは、私が並ぶべき列とは反対方向の列へと走っていく。
繋げよ、なんて。
まるで私もこれからバレーの試合に出るような気分になってくる。
その後間もなく、リレーはスタートした。
スターターピストルの音と共に、私にとっての恐怖の時間が始まったのだった。