第8章 春への道
物凄い勢いで走ってくる影山くんが差し出すバトンを、果たして私は上手く受け取ることができるのだろうか…
気圧されてバトンを受け取らず、そのまま逃げ出しかねない。
そう思っていたら、影山くんに声をかけられた。
「おい、俺達も練習するぞ。」
「う…うん。」
「何だよその気の進まねえ感じの返事は。」
「だって……影山くんが物凄い勢いで走ってくると思うと…」
「ああ?!何が言いたいんだよ。」
「よし、はやく始めよう!!」
影山くんが怒り出しそうだったので早々に話題を切り上げる。
一旦距離を取って、軽く走ってくる影山くんからバトンを受け取った。
あれ、案外うまくいった。
「おい、今度は本気で走るからちゃんと受け取れよ。」
そう言って再び私と距離をとった影山くんは、本当に本気の走りでこちらに向かってくる。
ちょっと…!
怖い、怖い、速い……!!!
「ぎゃー!!!」
バトンを受け取れるくらい近付いたところで、私はさっきの想像通り受け取りを拒否して逃げ出してしまった。
いつもこうして追いかけられているから反射的にとってしまった行動でもある。