第8章 春への道
「バ、バカ!お前何でそういうこと言うんだよー…!」
「…いや、俺は大丈夫だってことを言いたかったんすけど…」
「最後の一言が余計なんだよ!!」
菅原先輩が影山くんを窘めてくれるけど、もう遅い。
転ぶことを意識し始めてしまった。
転ぶ転ぶ転ぶ転ぶ………
転んだらビリ転んだらビリ転んだらビリ………
「だ、大丈夫だよ菜月。普通に走ればいいだけだから!そんなに気張らなくても。」
「菅原先輩……」
「そうだぞ、変に意識すると余計危ないことになりかねないからな。結果の方には俺達が責任持つから、菜月は人数の穴埋めだけしてくれればOKだから。」
「大地さんも……」
うちの先輩たちは、皆優しい。
「そうだよ菜月!俺が菜月の分まで頑張るから!!」
「ひ、日向くんー…!」
日向くんがとても男らしく見える…!
私と同じで割と緊張しいな日向くんは、とても俊足だから本当はトップバッターに据えられてもおかしくなかったのだけど、それは本人が辞退したらしい。
ピストルの音と同時に走り出すのが怖いのだそうだ。
「もうそんなに時間ねえけど、バトンの受け渡しの練習するぞ。こっち来い菜月!」
西谷先輩に促されて、バトンの受け渡しの練習に入る。
クラス対抗の方でも受け渡しの練習は何度かしていたから、何となく上手くできそうな気はする。
実際、西谷先輩に渡すのは何度やっても上手くいった。
問題は、受け取る方……。