第8章 春への道
「そんな心配すんなって菜月!!」
私の様子を見かねたのか、西谷先輩が背中をバシッと叩いてくる。
「お前がどんなに遅かろうが、俺が絶対になんとかしてやる!!!」
「西谷先輩……!!!」
西谷先輩は、このリレーでアンカーを務めることになっている。
私がバトンを渡す相手だ。
つまり、私の走る順番は最終走者の一つ前。
もし接戦だった場合、とても責任の重い順番なのである。
でも、西谷先輩が元気付けてくれたので少し持ち直す。
先輩に大丈夫だと言われると本当に大丈夫な気がしてくる。
何とか西谷先輩に繋げば……!
私がバトンを渡す相手は西谷先輩だけど、受け取る相手は誰だろう。
走者順の表を見て、私は一瞬ビクッとなってしまった。
「か、影山くん……」
「菜月、そんなに緊張するな。」
振り返ると、腰に手を当てて軽く息を吐く影山くんがいた。
てっきり、転んだりしたら承知しねえとか脅されるのかと思ったけど、影山くんも西谷先輩みたいに勇気付けてくれるんだ…!!
「俺が大量リードしといてやるから万が一にも追いつかれるなんてことはねえよ。お前が転んだりしない限りな。」
「………………」