第8章 春への道
二人でいただきますの挨拶をしてから食べ始めた。
私はつい、先輩の様子を窺ってしまう。
「うん、うまい!!」
一口目を食べた先輩は、いつもの笑顔でそう言った。
それを見て、何だかほっとする。
「やっぱり、好きなものを食べると気持ちが上向きますよね!」
「それもそうだけど、俺は何を食べるかよりは誰と食べるかのほうが大事かな。」
「え…」
「誘ってくれてありがとな。なんか、元気でたよ。」
一番辛いカレーを食べているとは思えないほどの爽やかさで、先輩は笑う。
私は心臓をぎゅっと掴まれたような気がして、思わず俯いた。
「菅原先輩は…どうしてそんなに私のこと…。」
先輩なら、もっと可愛くて素敵な人とも付き合えるはずなのに。
どうして私なんかにこんなに構って優しくして、一緒にいたいと言ってくれるんだろう。
「うーん…菜月の好きなところならいくらでも挙げられるんだけどさ。そういうことじゃないんだよな。」
困ったように笑う先輩は、そのまま続ける。
「説明できるほど簡単じゃないっていうか…。本能が…。そう、本能がお前じゃなきゃ嫌だって言ってるんだよ。」
「ごめんなさい、自分で聞いておいてあれなんですけど、今恥ずかしすぎて倒れそうになりました。」
「そうだよ、お前が聞いたんだからちゃんと受け止めろよなー。」