第8章 春への道
先輩の言葉に照れた私は、咄嗟にメニューで顔を隠す。
それに気付いた先輩は、だめだよと言って私からメニューを奪い、机の上に広げた。
「せっかく菜月と二人で居るのに顔見られないんじゃ、何か損した気分になるだろ。」
「そんなこと言われると余計顔隠したくなるんですけど…」
「へへ。恥ずかしがってるお前見るの好きだから、俺は嬉しい。」
「もう……。」
恥ずかしかったけど、先輩が笑ってくれるなら私も嬉しかった。
その後先輩は本当に一番辛いカレーを注文してしまい、私はそれが届くまでずっとそわそわしていた。
やがて運ばれてきた最強のカレーは、私が想像していたものよりずっと普通のカレーに近く、逆に驚いてしまった。
色なんて普通のカレーより少し濃いかな、というくらいのものだ。
もっと真っ赤なカレーがやってくるとばかり思っていた。
「なんかこれ…言われなきゃ普通に食べちゃいそうですね。」
「ん?食ってみる?」
そう言って先輩は一口目のスプーンを私に向けてくる。
「いやいやいや!冗談きついですよ!絶対無理です!」
「はは、だよなあ。」