第8章 春への道
先輩のショッキングな一言に、私は少ししょげてしまった。
「あ…いや…そんな、何かあったんでしょうけど話したくないなら無理に話さなくてもいいですよ。私、良いことなんて何も言えないですし…。」
「え?」
ポカンとした表情で、先輩は私の顔を見つめてくる。
「あ…えーと…。話をしたくないってことじゃないよ、今の。お前のこと、このまま抱きしめて離したくないってこと!」
「えっ…」
一気に頬が熱くなる。
日本語って難しい。
イントネーションまで同じなんだもん。
影山くんに何も良いことを言ってあげられなかったという気持ちがあったため、勘違いしてしまった。
私の反応を見て、先輩はようやく笑顔を見せてくれた。
それを見て、私は心底ほっとする。
ああ、私。
やっぱり先輩には笑顔でいてほしい。
先輩の表情が曇るところなんて、見たくないんだ……。