第7章 東京遠征
「俺さ、時々弱気になりそうな自分が一番怖いよ。」
「大地さん……」
「俺が一番しっかりしてなきゃいけないのにな。たまにスガにも怒られる。……それでもたまに考えちゃう時があるんだよ。」
「……?」
「今目指してる“春”が終わったらどうするんだろうって。」
“春”が春高のことを指していることはすぐに分かった。
3年生はこれからの試合は一戦一戦、負けたら終わりのプレッシャーとの戦いになる。
最後になるかもしれない試合を戦う春への道は、精神的にも相当負担がかかるものだろう。
「俺がこんなこと言ったの、ここだけの話な?」
「あ、はい…」
「さあ、もうそろそろ起床時間だ。あいつら叩き起こしてくる!」
私が言葉を返す前に、大地さんは自らこの話題を終わらせた。
私に気を遣わせないためだろう。
何も気の利いたことは言えなかったけど、私は少しだけでも大地さんの弱みを見せてもらえたことに喜びを感じていた。
去っていく広い背中を見つめる私の心は安寧を取り戻し、じんわりと温かくなっていた。