第7章 東京遠征
私の期待通り、部屋を出てすぐに男子部屋から出てくる大地さんに遭遇した。
「あ、菜月。おはよう。はやいな。どうかしたか?」
「大地さん……」
悪夢を見たあとは、誰かに会うと安心する。
後からだと笑い飛ばせるような夢の中の出来事も、実際に夢に見ている間はリアルと同じように恐怖を感じてしまうからだ。
「嫌な夢見ちゃって…。」
「嫌な夢?どんな?」
「流血的な…。殺されたと思います、私。」
「うわ…それは朝から嫌な思いしたな。」
大地さんはこちらに近付いてきて、私の頭にぽんと手を乗せた。
「でも大丈夫だよ。リアルはこっちだから。お前はちゃんとここで生きてるよ。」
「はい……」
「それに、殺される夢って悪い意味じゃないって言わないか?」
「え、そうなんですか?」
「いや、悪い。詳しくは知らないけどさ。とりあえずそう思っとけって。」
そう言って大地さんは笑う。
その笑顔を見て私はとても安心した。
さっきの悪夢を少しずつ忘れていくように感じる。
「お前疲れてるから悪夢みるんじゃないか?毎日影山に付き合って夜遅いんだろ。」
「あー…大丈夫ですよ。それより!昨日の夜、影山くん新しい速攻のトス成功したんですよ!」
「まじか!!」
昨日のトスの成功のことを報告したあたりから、二人で大きな声を出してしまっていた。
二人同時にそれに気付き、顔を見合わせた私達は部屋の前を離れて一旦外に出ることにした。