第7章 東京遠征
そうこうしているうちに飼い主さんが到着した。
飼い犬が見つかったことで心底ホッとした様子で少し涙ぐんでいた。
つい、私ももらい泣きしそうになる。
「良かったね。もう、一人でどこかに行っちゃダメだよ。」
そう、ポメラニアンに告げてからさよならをした。
安心感に包まれて、元来た道を戻る。
やっぱり探しに来てよかったなあ。
心からそう思った。
影山くんと体育館に戻る道中、道路を横断しようとしたときだった。
嫌なタイミングでバッグについていた、以前影山くんにもらったバリボちゃんのマスコットが外れ、道路に落ちてしまった。
「あ……!」
急いで取りに戻ろうとすると、間近に迫っていた車のヘッドライトに目がくらむ。
思い切り腕が引かれて、気が付くと私の足は歩道に乗っていた。
車はそのままスピードを落とすことなく目の前を走り去っていく。
直後、暗い夜道に影山くんの怒声が響いた。
「バカ!!何やってんだよお前……!!」
「ご、ごめん…!バリボちゃんが…!」
私は落とした時よりも少し先に飛ばされてしまったバリボちゃんを取りにいってから影山くんの元へと戻った。
「そんなもんのためにひかれたらどうすんだよ!!」
「だ、だってこれ大切だし…。」
「物なんていくらでも替えがきくだろうが!」
「きかないよ!影山くんがくれたバリボちゃんはこれだけだもん!!」