第7章 東京遠征
早速電話をかけ、繋がったポメラニアンの飼い主さんは平謝り状態だった。
すぐに迎えに行くからと言われたので、私達はここで飼い主さんが来るまで待つことにした。
「こういう時のお前の行動力って異常なものがあるよな…」
「そ、そう?」
「普段ボケっとしてるから余計そう感じるのかもしんねえけど。」
「あはは…ボケっとねえ…まあ反論できないけど。」
さっきから影山くんは、私の腕の中のポメラニアンにちらちらと何度も視線を送っている。
「あ、影山くんも触りたい?どうぞ。飼い主さんが来る前に少しくらいならいいよね。」
そう言って影山くんに渡そうとすると、ポメラニアンは目に見えて怯えたような感じを見せた。
「俺、動物に好かれねえから。」
「影山くん笑わないからじゃない?ほら、笑って笑って!」
そうリクエストするも、返ってきたのはあの無理矢理作った怖い笑顔だった。
ポメラニアンは余計に怯えてしまう。
「影山くん、普通に優しい表情とかするときもあるのに…。」
そう言うと、影山くんはまた照れてそっぽを向いてしまった。
「そんな特別なもん、そうぽんぽん出せるか!」
まあ、そうか。
影山くんにとっては特別な表情なのかもしれない。
でも、私はそれを知っている。
そう考えると少しドキッとした。